NICOLAO株式会社 板東 寛史
決して多くを言葉にしていただいたわけではありませんが、働く姿をもって語られるからこそ、私の人生観に強烈な影響力をもたらしてくださっています。
壱製パン所の谷さんに初めて出会ったのは、私が大阪から滋賀へ移住してきて間もない頃。私が右も左も分からない、ただがむしゃらに目の前にあることだけに挑戦していた、いわば自分のことしか考えられないような未熟者だった頃です。
初めてお会いした時の印象は、キレッキレの目、大きな声、早い喋り口調、人の数倍早く歩く人、ここではお話しできないようなdelicateなトーク内容も含め、紛れもなく異質な方であることを一瞬で気付かされたのを今でも鮮明に覚えています。
のちに私は、そんな谷さんの強烈なファーストインパクトに覆い隠された本当の姿を、幸運にも知らされることになります。
私が創業間もない頃、世間と同じく漏れなくたくさんの困難が現れるわけですが、未熟な経営者にとってそういう時は、決まって手っ取り早く、安全でリスクの低い、効率的な解決策へと身を転じてしまいます。
そういう時というのは、経営はもとより、人としての原理原則や哲学が失われているものです。
当然、うまくいくことも、長く続くことも一切ありません。
そんな頃、谷さんのあの余裕は何なんだろうか、
あの大きな背中は何なんだろうか、
あの人脈は何なんだろうか。
私は勝手な憶測を張り巡らせ続けました。
「誰よりも懸命に働く職人」
そして数年かけて、それらは全て谷さんの「人格」であることに辿り着きました。
人を惹きつける魅力というのは、往々にして外見だったり、いわゆるその人のキャラクターで判断されることが多いです。
ですが谷さんにおいては、それらは全然違っていて、
誰よりも人脈に溢れ、誰よりも魅力的で、絶大な存在感を持つ谷さんは、
誰よりも懸命に働いている職人だったのです。
皆が寝静まっている間に目を覚まし、懸命に腕を振るい、もう休んでもいいだろうという時間にも、誰か人のために働いているのです。
「鉄の掟」
私が強く思うのは、これこそが谷さんの人生の鉄の掟、人格であるということです。
私の中で仕事とは、人生と同義語なので、次のように言い表しますが
鉄の掟を持った人生は強烈な力を持っています。
何があろうともブレず、突き進みます。
さらに、谷さんの鉄の掟には人に火をつけ、燃え上がらせ、その者たちは進み続けるという刻印がなされています。
私も、谷さんに火をつけていただいたうちの1人です。
私は谷さんに出会って、仕事を重ねることで、人格を高めていくことの大切さを知ることができました。
経営者に人格が無いのに、会社に人格など宿せるはずがないのです。
壱製パン所のパンには、谷さんの人格が存分に宿っています。
これからも時間の流れと比例し、全ての人々を魅了するという困難を成し遂げていかれることと思います。